[ GEN h · ソニー・コンピュータエンタテインメント ]
PlayStation Vita(PS Vita)
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ハードウェア仕様
- メーカー
- ソニー・コンピュータエンタテインメント
- CPU
- ARM Cortex-A9 クアッドコア @ 333 MHz-2 GHz(PowerVR SGX543MP4+ GPU)
- ディスプレイ
- **5 インチ有機 EL タッチ**(Vita 1000)/ **5 インチ LCD**(Vita 2000 改)960×544
- RAM
- 512 MB(システム)+ 128 MB(VRAM)
- 音源
- ステレオスピーカー + デュアルマイク
- メディア
- **Vita カートリッジ + 専用メモリカード**(高価)+ デジタルダウンロード
- ネットワーク
- Wi-Fi 802.11b/g/n + 3G(Vita 1000 一部 SKU)+ Bluetooth
- 操作
- デュアルアナログスティック + 前面タッチ + **背面タッチパッド**(家庭用機初)
発売日
- 日本
- 2011-12-17
- 北米
- 2012-02-22
- 欧州
- 2012-02-22
累計販売台数
- 公式数値
- ソニー公式の生涯累計は非公表
- コミュニティ合意
- 全世界累計 約 1,500-1,600 万台(Niko Partners 推計、2019 年生産終了時)
業界推計、ソニー内部数値は非公開
派生機種
PS Vita PCH-1000 / 1100
2011有機 EL 初期フラッグシップ
5 インチ有機 EL、厚めの筐体、専用充電端子、一部 SKU の 3G 対応を備えた初期型。後年は有機 EL の発色によりコレクター人気が高まり、ソニーが高級携帯機を目指した当初の野心を最もよく示すモデルになった。
PS Vita PCH-2000 Slim
2013LCD 薄型改訂版
有機 EL を LCD に変更し、本体を薄型軽量化、バッテリー持続時間を改善、1 GB 内蔵ストレージと micro-USB 充電を追加した改訂機。携帯性とコストは改善したが、初期型の高級感は薄れ、Vita がコスト管理へ移ったことを示している。
PlayStation TV / Vita TV
2013 JP / 2014 WWリビング用マイクロコンソール
Vita のハードを HDMI 小型機にした製品で、一部の Vita、PSP、PS1 ダウンロード作品と Remote Play に対応した。小さな PlayStation という構想だったが、タッチ操作互換の制約と曖昧な位置づけにより短期間で主流から外れた。
PS Vita メモリーカード
2011高価な専用ストレージ
4 GB から 64 GB までの専用カードは、Vita で最も批判されたハード戦略だった。海賊版対策とエコシステム管理のためだったが、購入者に高い追加ストレージ費用を強制し、導入時の印象を大きく悪化させた。
PS Vita ゲームカード
2011専用物理カートリッジ
Vita は PSP の UMD を捨て、小型フラッシュカードへ移行したことで、ロード時間と消費電力を改善し、任天堂携帯機に近い構造へ移った。しかしゲームカードと専用メモリーカードの組み合わせは、総ストレージ費用への不満を解消できなかった。
2011 年 12 月 17 日、ソニー・コンピュータエンタテインメントは PlayStation Vita(PS Vita)を日本で発売した。価格 24,980 円(Wi-Fi 版)/ 29,980 円(3G+Wi-Fi 版)。PSP の後継機にして、ソニーにとって現時点で最後の dedicated handheld——開発コードネーム NGP(Next Generation Portable)の時点で、真の競合がニンテンドー 3DS であることは明確だった。設計目標は明快で、PS3 級のグラフィックを携帯機に収める——PSP と同じく、ソニー流の「現行据置機の小型化」アプローチである。
ハードウェア面で Vita は同時期最強の携帯機だった。ARM Cortex-A9 クアッドコア @ 333 MHz-2 GHz + PowerVR SGX543MP4+ GPU(iPhone 4S と同系列の GPU の 4 コア版)、5 インチ有機 EL タッチ 960×544(Vita 2000 で LCD に変更)、512 MB RAM、デュアルアナログスティック(PSP で長年批判されていた単スティック構成を是正)、前面タッチ+背面タッチパッド(家庭用機・携帯機業界初)、前後デュアルカメラ、6 軸センサー、3G 内蔵(一部 SKU)、Wi-Fi。スペック上 Vita は「携帯機サイズの PS3」——しかし PSP 対 DS と同様、スペック優位は市場優位に転換されなかった。
戦略的に最も致命的だったのは「専用メモリカード」採用である——ソニーは PSP 時代のメモリースティック Pro Duo(カメラ等と互換)を廃止し、Vita 専用の暗号化対応カード(ROM 海賊版対策の社内合理化)に切り替えた。4 GB $19、8 GB $29、16 GB $59、32 GB $99——同時期の microSD カードに対して 3-5 倍の価格水準である。Vita のゲームソフトは基本的にカードへのインストールを要求したため、本体購入時にメモリカードもほぼ強制的に追加購入する必要があった。iPhone により安価で大容量のストレージが当たり前になっていた時代に、この価格設定はユーザーに極めて強い悪印象を残した。後期に Vita 本体は $199 まで値下げされたが、メモリカードの価格は最後まで合理化されなかった。
第二の致命的な圧力はスマートフォンだった。Vita 発売の 2011 年時点で、iPhone は 4 歳、Android も 4 歳、Angry Birds・Cut the Rope・Infinity Blade などのスマホゲームは既に成熟期。ソニーが PSP の「携帯機 + マルチメディアプレーヤー」路線を Vita で再現しようとしたが、2007 年の PSP 時代に通用したマルチメディア訴求は、2011 年の iPhone 環境では既に意味を失っていた。Vita はニンテンドー 3DS(任天堂第一線フランチャイズの主戦場が維持された)とスマートフォン(カジュアル層を完全に吸収済み)の両側から挟撃される構造となった——PSP が経験せずに済んだ、Vita が直面せざるを得なかった時代の分水嶺である。
ソニーは中期以降、ファーストパーティ作品の供給をほぼ停止した——SCE 社内のリソース配分は PS4 に明確に集中した。発売から 2 年間のソニー第一線作品(『アンチャーテッド -地図なき冒険の始まり-』、『キルゾーン: マーセナリー』、『リトルビッグプラネット PS Vita』、『Tearaway』、『GRAVITY DAZE』)は質は高かったが本数が薄く、後期になるにつれて Vita は実質的に PS4 リモートプレイ端末化していった。この「ソフト供給の枯渇」こそが Vita の販売崩壊の最も直接的な原因である——どれほど良いハードウェアでも、ゲームがなければユーザーは離れる。
Vita の後半生を実質的に支えたのは、インディーズと日系ニッチ RPG・ビジュアルノベルだった——『ペルソナ 4 ザ・ゴールデン』(アトラス 2012、PS2 版 P4 の大幅補完版、Vita のカルト的傑作とされる)、『ダンガンロンパ 1+2』(スパイク・チュンソフト 2014)、『GRAVITY DAZE』(SCE ジャパンスタジオ/外山圭一郎 2012)、『ソウル・サクリファイス』(マーベラス/稲船敬二 2013)、『軌跡シリーズ PSV 移植』(日本ファルコム)、『アトリエ/閃乱カグラ/魔界戦記ディスガイア/戦国ランス』など日系ニッチタイトル群 —— Vita の末期は 「日本製 RPG とビジュアルノベルの避難場所」 という独特の位置を獲得した。これが後年 Vita が日本国内・華人圏のヘビーゲーマー層で「コレクション機」として高く評価される理由である。
商業的には Vita は全世界累計 1,500-1,600 万台(ソニー公式の生涯出荷数は非公表、業界推計)——PSP の 8,000 万台超の約 1/5。2019 年 3 月、日本での最終生産が終了し、ソニーはそれ以降 dedicated handheld を一切リリースしていない。Vita は現時点でソニー最後の携帯機——2024 年発売の PlayStation Portal は PS5 のリモートプレイ専用周辺機器(単独でのゲーム実行不可)であり、dedicated handheld の復活には該当しない。ソニーは PSP の絶頂期(任天堂の携帯機支配に唯一食い込んだ瞬間)から Vita の市場撤退(携帯機市場を完全に任天堂へ返上)までを、わずか 15 年で完結させた——これは家庭用ゲーム機・携帯機産業史において最もドラマティックな単独企業のカテゴリ撤退である。
代表作
- ペルソナ 4 ザ・ゴールデン(アトラス、2012、カルト的傑作)
- Tearaway(Media Molecule、2013)
- GRAVITY DAZE(SCE ジャパン、2012)
- ソウル・サクリファイス(マーベラス、2013)
- ダンガンロンパ シリーズ(スパイク・チュンソフト、2014 〜)