[ GEN 2 · GCE(General Consumer Electronics)→ Milton Bradley(1983 年買収) ]
GCE Vectrex(ベクトレックス)
ハードウェア仕様
- メーカー
- GCE(General Consumer Electronics)→ Milton Bradley(1983 年買収)
- CPU
- Motorola MC68A09 @ 1.5 MHz
- グラフィック
- **ベクトル描画**(ラスタではない)— 9 インチベクトル CRT を直接駆動
- RAM
- 1 KB
- 解像度
- 330×410(ベクトル座標)
- ディスプレイ
- **9 インチベクトル CRT 内蔵**(モノクロ、ゲームはプラスチック製カラーオーバーレイで色を補完)
- 音源
- AY-3-8912 PSG — 3 ch
- メディア
- ROM カートリッジ
発売日
- 日本
- 1983-07-01
- 北米
- 1982-11-01
- 欧州
- 1983-04-01
累計販売台数
- 公式数値
- 全世界累計 約 25 万台(1982-1984)
- コミュニティ合意
- アタリショック前に生産終了 / **史上唯一の画面内蔵家庭用ゲーム機**(9 インチベクトル CRT)
Milton Bradley 1984 年撤退時累計
派生機種
GCE Vectrex(HP-3000)
1982 NA初代ベクトルディスプレイ機
1982 年 11 月に General Consumer Electronics(GCE)が発売、価格 $199——**史上唯一の画面内蔵家庭用ゲーム機**。9 インチ白黒ベクトル CRT(ラスタではなく真のベクトル描画、画面精度はアーケードのアステロイドやバトルゾーン同等)、Motorola 6809 CPU、AY-3-8912 音源、カートリッジ交換式。**プラスチック製オーバーレイを画面に貼って色を補完**——1982 年のハードウェアコストでカラー表示を実現する妥協策で、1972 年の Magnavox Odyssey のオーバーレイ伝統を継承していた。
Milton Bradley Vectrex
1983 NAMilton Bradley 買収後リブランド版
1983 年初に Milton Bradley(玩具とボードゲーム大手)が約 1,500 万ドルで GCE を買収、Vectrex は **Milton Bradley** ブランドで継続販売された。MB は大手流通網を駆使して Vectrex を主流玩具店へ押し込もうと試み——Toys R Us、Sears、JCPenney に全面展開した。しかし 1983 年のアタリショック直撃により、MB Vectrex はその犠牲となった。**1984 年に Hasbro が Milton Bradley を買収**、新経営陣は即座に Vectrex ラインを打ち切った。
Bandai Vectrex(光速船)
1983 JP日本ライセンス版
1983 年 7 月にバンダイが「**光速船**」(こうそくせん)の名で日本で発売、価格 54,800 円——**日本のプレイヤーがベクトルディスプレイ機に初めて触れた瞬間**。バンダイはライセンスを取得し 8 本の日本版カートリッジ(Polar Rescue など)をローカライズした。しかし 1983 年の日本ではファミコン(任天堂)発売の衝撃を同時に受けており、**光速船の販売は推定 1.5 万台未満**、1984 年に生産終了となった。今日では日本のコレクター市場で最も希少な家庭用機の一つ。
Light Pen 光ペン + Art Master
1983画面ドローイング光ペン周辺機器
1983 年発売の Vectrex Light Pen($30)は **Art Master カートリッジ**と組み合わせ、プレイヤーがベクトル画面に直接ドローイング、文字書き、アニメーションを行えるようにした。**家庭用機産業では稀なドローイング周辺機器**(任天堂のマリオペイントは 1992 年まで登場せず)。光ペンの原理は CRT 電子ビームの瞬間位置を検出するもので、ベクトルディスプレイの特性により Light Pen はラスタ画面より高い精度を実現した。少数のソフト(Melody Master、Animaction)が対応したが、商業的には Vectrex 末期のニッチアクセサリだった。
3D Imager 立体メガネ
1984回転カラーホイール式 3D 周辺機器
1984 年発売の **Vectrex 3D Imager**($50)はヘッドマウント式立体メガネ——機械的に回転するカラーホイール(赤・青・緑のフィルタと黒色マスク)が 60 Hz で左右の眼の画面を切り替え、立体 3D 錯覚を作り出した。**家庭用ゲーム機史上初の量産 3D ディスプレイ周辺機器**で、任天堂ファミコン 3D システム(1987)より 3 年早く、Sega 3-D Glasses(1987)より 3 年早く、バーチャルボーイ(1995)より 11 年早かった。しかし対応ソフトは 4 本(Minestorm 3D、Crazy Coaster、Narrow Escape、3D Pole Position)のみ、1984 年 MB 撤退後に生産終了となった。
GCE ベクトレックスは家庭用ゲーム機産業史上、最も奇妙で最も貴重な単一製品である。1982 年 11 月に北米で $199 米ドルで発売。画面内蔵家庭用ゲーム機としては史上唯一——9 インチベクトル CRT が筐体に直接溶接されており、プレイヤーは本体を縦置きで机に置くだけで、外部テレビは一切不要だった。フォルムはアーケード筐体(アステロイド、テンペスト系列)の縮小版に近く、縦置き、コントローラは折りたたみ式で本体に収納される設計だった。1980 年代の家庭用機産業における最も大胆な工学実験である。
技術的には、ベクトレックスは根本的に異なる描画原理を採用した——ベクトルグラフィクスである。すべての視覚要素は座標点間の直線として描かれた(各スプライトは線分の連続)。当時の他の家庭用機が用いていた標準的なラスタ(ピクセルグリッド)ではなかった。ベクトル描画の利点はラインが無限に鮮明であること——テレビ上のピクセル画像が当時の家庭用機の標準だった環境において、アーケード『アステロイド』(1979)、『バトルゾーン』(1980)、『スター・ウォーズ』(1983)といったベクトルアーケード機と同等のライン精度を家庭にもたらした。ベクトレックスは、本物のアーケード・ベクトル体験を家庭に持ち込めた数少ないマシンのひとつである。
代償はモノクロ専用であること(ベクトル管は色を精密に制御できない)。GCE はマグナボックス オデッセイ(1972)の古い手法を流用した——プラスチック製カラーオーバーレイをスクリーンに貼付して色彩を補う方式である。各ゲームには対応する透明シートが同梱され、プレイヤーはそれを CRT 前に挟んで色を演出した。10 年前の解法は 1982 年にはレトロに見えたが、独特の視覚魅力を生んだ。
ソフトラインは小規模(合計約 30 本)だが品質は堅実だった——『Mine Storm』(1982、本体 BIOS 内蔵、アステロイド系シューター)、『Star Castle』、『Scramble』移植版、コナミの『Pole Position』移植。Vectrex 3D Imager——画面と同期するシャッタ眼鏡周辺機器——は家庭用機史上初めて発売された 3D ディスプレイ周辺機器であり、セガ マスターシステムやファミコンの類似 3D システムより 10 年ほど先行していた。
GCE は 1983 年に玩具大手 Milton Bradley に買収されたが、Milton Bradley 自身が 1983-1984 年のアタリショックを乗り切れず——ベクトレックスは発売わずか 18 ヶ月で生産終了。全世界累計販売は約 25 万台——同時期のあらゆる主流家庭用機よりはるかに少なかった。しかしこの小規模性こそが、retro コミュニティにおいてコレクターズアイテムの定番となる理由となった——技術的独自性と低生産量の希少性により、保存状態の良いベクトレックスは 2026 年現在も eBay で $400-800 米ドルで取引されている。Smith Engineering(GCE 創業者 Jay Smith の会社)はベクトレックスの知的財産権を現在も保有し、ROM ハッキングと homebrew 開発を公式にサポートしている——これによりベクトレックスは、活発な homebrew シーンを持つ数少ない 1982 年世代の家庭用機となっている。
ベクトレックスは「家庭用機はどんな形でも有り得る」という産業可能性の単独証拠である——その後 40 年間、家庭用機で画面内蔵を試みた製品は存在しなかったが、2017 年のニンテンドースイッチ(携帯/据置ハイブリッド)は、ある意味でベクトレックスの「自前の画面を持つゲーム機」という精神と韻を踏んでいる。
代表作
- Mine Storm(GCE、1982、本体 BIOS 内蔵)
- Star Castle(GCE、1983)
- Berzerk(GCE、1983 移植)
- Scramble(GCE、1982)
- Pole Position(GCE、1982)